戦慄のクオリア
柱に縋り、なんとか立ち上がったスカーレットは教室を見渡した。教師はガラスの破片が首に刺さり、死んでいた。生徒の中にも、ぐったりとして動かない人が居た。大切な友達なのだろう。動かない生徒に縋り付き、泣いている生徒の姿もあった。
痛みで、身動きが取れず、呻き声を上げている人、恐怖に震えている人、訳が分からずに泣いている人も居た。
スカーレットはそんな彼らの間を無機質な顔で通り過ぎ、教室を出た。ガラスが刺さった足を引きずりながら少しずつ足を先に進めるスカーレット。無視して通り過ぎる教室の光景は何処も同じだった。
急な出来事で誰も動くことができない中、スカーレットだけが一人、廊下を歩いていた。其の姿に気づく生徒は誰一人居ない。
「姉さん」
唯一の例外。其れは幾戦の修羅場を潜り抜け、此の程度に全く動じないスカーレットの弟、ジェイドだけだ。ジェイドは爆風のせいで見た目はボロボロだが、目立った外傷はなかった。
「姉さん、怪我を」
「大したことはない」
ジェイドは怪我をしたスカーレットに寄り添った。ずしりと、スカーレットの体重がジェイドに圧し掛かった。手足にガラスが刺さり、床にはポタポタと血がついていた。本当は立っていることが奇跡に近い状態だった。
そんな状況で「大したことはない」わけではなかった。其れがスカーレットの強がりであることは一目瞭然だった。だが、ジェイドは何も言わずにスカーレットの体を支えた。
<私の名前はアダーラ>
校舎の外から放送が流れた。重苦しい声は更に続けた。
<ラスール帝国の愚民共、よく聞け。我々は此れよりリベレイションを行う>
アダーラは正義。リベレイションは解放を意味する。スカーレットは此の放送を聞いて失笑した。
「くだらない」
「姉さん?」
「グレンの所に連れて行って」
スカーレットの失笑の理由をジェイドは問うた。だが、スカーレットの返答は自分の行先を告げるものだった。此れ以上は聞いても何も答えてはくれない。長年、スカーレットの弟をしてきたジェイドには分かった。だから何も聞かずにジェイドはスカーレットをグレンの部屋に連れて行った。
痛みで、身動きが取れず、呻き声を上げている人、恐怖に震えている人、訳が分からずに泣いている人も居た。
スカーレットはそんな彼らの間を無機質な顔で通り過ぎ、教室を出た。ガラスが刺さった足を引きずりながら少しずつ足を先に進めるスカーレット。無視して通り過ぎる教室の光景は何処も同じだった。
急な出来事で誰も動くことができない中、スカーレットだけが一人、廊下を歩いていた。其の姿に気づく生徒は誰一人居ない。
「姉さん」
唯一の例外。其れは幾戦の修羅場を潜り抜け、此の程度に全く動じないスカーレットの弟、ジェイドだけだ。ジェイドは爆風のせいで見た目はボロボロだが、目立った外傷はなかった。
「姉さん、怪我を」
「大したことはない」
ジェイドは怪我をしたスカーレットに寄り添った。ずしりと、スカーレットの体重がジェイドに圧し掛かった。手足にガラスが刺さり、床にはポタポタと血がついていた。本当は立っていることが奇跡に近い状態だった。
そんな状況で「大したことはない」わけではなかった。其れがスカーレットの強がりであることは一目瞭然だった。だが、ジェイドは何も言わずにスカーレットの体を支えた。
<私の名前はアダーラ>
校舎の外から放送が流れた。重苦しい声は更に続けた。
<ラスール帝国の愚民共、よく聞け。我々は此れよりリベレイションを行う>
アダーラは正義。リベレイションは解放を意味する。スカーレットは此の放送を聞いて失笑した。
「くだらない」
「姉さん?」
「グレンの所に連れて行って」
スカーレットの失笑の理由をジェイドは問うた。だが、スカーレットの返答は自分の行先を告げるものだった。此れ以上は聞いても何も答えてはくれない。長年、スカーレットの弟をしてきたジェイドには分かった。だから何も聞かずにジェイドはスカーレットをグレンの部屋に連れて行った。