戦慄のクオリア
「よぉ、生きてたか」
「グレン先生、何で無傷?」
学校の窓ガラスは全て割れ、コンクリートで作られた壁は崩れ、意味をなしていなかった。其の中で、無傷でいられるはずがないのだ。
「普段の行いがいいからだろ」
一〇〇%悪質な生き方しかしてこなかった奴に言われても説得力はゼロ。話を振ったことをジェイドは後悔した。
「お前の生き方はどうでもいい」
グレンの性格を知っているスカーレットはグレンの台詞を完全に無視した。
「アイツらは何?」
「リベレイション」
「其れは組織名か?」
馬鹿にしきったスカーレットの顔にグレンは同じく馬鹿にしきった顔をした。リベレイション。此れが組織名であることは、どうやら本当のことのようだとスカーレットはグレンの顔を見て確認した。
「何を解放するの?」
「イカルガ王国を」
「もしかして国外追放されたイリーナとアルフォードが絡んでる?」
「ご明察」
「裏に居るのは誰?」
残された戦力だけではイカルガ王国をラスール帝国から解放するのは無理だ。なら、あの二人をバックアップする人間が必要になる。戦力などを貸してくれるものが。其処まで推測できたことによってスカーレットから出た言葉だった。
 スカーレットの鋭い指摘にグレンは満足したように笑った。
「エレジア連邦」
世界最強を誇る軍事国家の名前にさすがのスカーレットも驚いたが、地上に落ちた火の玉のことを考えれば別におかしなことではなかった。
最強を誇る軍事国家だからこそ大国であるラスールの首都半分を一瞬で、破壊することができる兵器を開発していても不思議はなかった。
「ラスール帝国はエレジア連邦の次に大きな国」
スカーレットの呟きに、グレンは面白そうに笑った。スカーレットが何を考えているのかを察して尚、彼は笑ったのだ。心から此の状況を楽しんで。其の神経がスカーレットは信じられなかった。
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