今を生きよう~あなたにタカラモノはありますか~
翔たちは、今日をわざと狙っていたのかな…。
だって、今日はおばちゃんとお父さん。どっちも帰りが遅い。
しかも火曜日。明日はテニスがある。
火曜日だから渉くんたちに会えない。

「痛い…痛い……もう…いいや…」

もうなにもしたくない。息をするだけで辛い、苦しい…。
私が悪いんだ。翔たちを怒らせているんだ。私がいるからダメなんだ。
それならいっそ…いっそ……。


「死んだらいい」

「もう、いい。なにも…かも。痛い。死んだら…こんなのなくなるんだよ」

私は、近くに置いてあった包丁を握った。

「これで、死ねるんだ。一瞬で…」

私は、包丁というものに、感激した。
こんなに身近に、簡単に死ねるものがあるなんて…はっはは…。

「ハハハ…ハハ…すごい…」

私が死んだら、誰もが喜ぶ。
私が死んだら、翔が笑う。
私が死んだら、死んだら…。

さあ、終わらそう、私のとても短い人生。

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