距離を測る
1
距離を測っているんだ、と彼は言った。
何の?と聞いた私に、彼は少し考えてから口を開いた。
こんなに親しくなった女性は初めてだから、と。
母親とも姉とも妹とも、――最も俺には妹はいないから正確なところはわからないけれど――、従姉妹とも違う、君との距離を測っているんだ。
測らないでいいのに、と私が言うと、彼は首を振る。
いや、測らなくちゃいけない、と言う。
なぜ、と私は言う。
彼はまた首を振る。
だって測らなくちゃ、どこまで近くていいのか、わからないじゃないか。そうしないと、僕は君との距離を無くしてしまいそうだ、それではいけない。
そうかしら。私は首を傾げる。
何故、と、今度は彼が訊いた。
だって、距離なんか、無くなってしまえばいいと思っているのに。
指先よりもっと、近くに、と思ってる。
近くって、どれぐらい。言った彼の指が私の手に触れた。
測っていいよ、と、私は言った。
考えるより簡単なことよ、と、私は言った。
彼は、私を抱き締めた。距離は、ゼロ。
測ったら、こんな距離だ。彼が、言った。
君はどう思う、と彼が、言った。
私は笑って、彼の背中を抱き締めた。
何の?と聞いた私に、彼は少し考えてから口を開いた。
こんなに親しくなった女性は初めてだから、と。
母親とも姉とも妹とも、――最も俺には妹はいないから正確なところはわからないけれど――、従姉妹とも違う、君との距離を測っているんだ。
測らないでいいのに、と私が言うと、彼は首を振る。
いや、測らなくちゃいけない、と言う。
なぜ、と私は言う。
彼はまた首を振る。
だって測らなくちゃ、どこまで近くていいのか、わからないじゃないか。そうしないと、僕は君との距離を無くしてしまいそうだ、それではいけない。
そうかしら。私は首を傾げる。
何故、と、今度は彼が訊いた。
だって、距離なんか、無くなってしまえばいいと思っているのに。
指先よりもっと、近くに、と思ってる。
近くって、どれぐらい。言った彼の指が私の手に触れた。
測っていいよ、と、私は言った。
考えるより簡単なことよ、と、私は言った。
彼は、私を抱き締めた。距離は、ゼロ。
測ったら、こんな距離だ。彼が、言った。
君はどう思う、と彼が、言った。
私は笑って、彼の背中を抱き締めた。