葵葉は元姫で元姫のトラウマは葵葉①


「朔空…」


朔空は私を苦しいくらい抱きしめる。


…それでも、あの時の

罪悪感と恐怖と怒りの塊(かたまり)が

私を冷たくしていく。



「どうした?

氷薇か?」


「…まぁ、そんなとこ…」

「…帰ったら、聞かせて……

今日は、そばにいてやるから。」


「ごめんね……」

「捕まってろ…」


朔空は私をおぶって

スタスタと歩く。


「…大丈夫。
俺は葵葉の味方だから。

…愛おしい(いとおしい)奴を
同意の上じゃないのに連れ去られる程
…俺も葵葉も落ちぶれてはいない。」


「…でも、知られたら、
終わりじゃない…

そんなの…もういや。
でも、今日も世直しする。」


「葵葉は強いから…
抱え込みすぎるなよ?」


「……」


朔空…今一番守りたいのはあなた。


あなたなの。


だから、守られていてはダメなの。


…私が、香澄も、朔空も、


守る…


イヤリングが入った胸ポケットが


妙に温かく感じた…


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