それでもやっぱり普通がいいっ!
あー……今日から地獄が始まる……。
なんて思っていたら、いきなり
後ろの方から声がした。
「あ、あの……」
「!?」
漫画の話を聞かれた……!?
慌てて後ろを振り返る。
てか、あれ? この声……。
「わか、くさ……さん?」
少し離れたドアの近くに立っていたのは、
若草さんだった。
彼女は少し申し訳なさそうな顔をして立っていた。
「……ごめんなさい。 盗み聞きをするつもりはなかったんだけど……。
たまたま階段の近くを通ったら二人の声が聞こえて……」
言いにくそうな彼女の顔。
その表情から、話は聞いた
と言うことが分かった。
……最悪だ。
漫画のことを人に聞かれた……。
男が……漫画を……俺らが……
描いてるなんて知られたら……。
しかもそれが、若草さんなんて。
頭がパニクる。
彼女を直視できない。
次は、なんて言われるだろう。
ーー『……んだよ』
昔の、嫌な記憶が甦った。
彼女が口を開き、何かを言おうとする。
それを遮ろうとした。
「……っ! わかくっ!」
「よければ手伝わせてくださいっ!」
「…………え?」