桜の下で、君を想う。
絵美は、走っていたそうだ。

桜が満開のあの公園から無我夢中に走っていたそうだ。

そして、道路に急に飛び出してしまい、大型のトラックがたまたまそこを通って頭を強く打った。

もし俺が、あの時呼び出していなければ、なんて言わない。

遅いんだ、そんなこと思ったって。

けれど、一人でベッドに寝転がると心の中の罪悪感が顔を出す。

君が大好きだった桜も、もう嫌いだ。

できる限り、彼女のそばにいたい、もしそれが許されるのであれば。




「おじさん、おばさん、絵美のそばにいてもいいですか?」

「でも・・・学校は?」

「いいんです、少しくらい休んだって。お願いします。」

何回も何回も頭を下げて、ようやく彼女のそばにいることができた。

「絵美も、そっちの方が嬉しいわよ。ね?」

そう言ってくれたおばさんに俺は顔向けができなかった。

俺のせいだ。

絵美は、他にそばにいて欲しい相手がきっといるんだろう。

俺ではない誰かが。

「でも、俺、告白断られちゃったんすよ、絵美に。」

「え?」

「きっと、誰かのことを今も思ってるんだろうな・・・」

「拓くん、それは・・・」

「いいんです、ごめんなさい、変な話しして。
お疲れでしょう、少し休んでてください。」

今は、少し一人になりたい。
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