桜の下で、君を想う。
「ありがとうございました・・・。」
深々と頭を下げながら、俺今何やってるんだろうと考えた。
「お悔やみ申し上げます。」
目の前の医者が俺に言う。
「ええ、はい。」
「あの、大丈夫ですか?」
「ええ、はい。」
俺の手には、さっき持ち上げた彼女の体の不自然な軽さだけが残っていた。
臓器がなくなった体ってあんな軽いんだな・・・。
「本当に行っちゃったんだなー俺をおいて・・・。」
ベッドは空っぽで、真っ白なシーツが目にしみた。
開いた窓からは微かに桜のにおいがした。
「桜か・・・」
一枚の淡いピンクの花びらが窓から待舞って、テーブルの日記の上に落ちた。
「日記・・・」
彼女が好きだった桜色のノートを手に取った。
「日記なんてかけるようなやつだったけ、お前?」
ノートのカバーをめくった。
紙のにおいと、君のにおいで溢れかえる。