夕方5時半過ぎの魔物
「…何してんの、はるちゃん」
その声が聞こえたのは、私が座り込んだまま「ごめんなさい、ごめんなさい」と小さく連発し始めた頃だった。
おばけに名前を知られているなんて。
もはや死を覚悟する状況に…
「はーるちゃん」
「……え?」
私が目を瞑る前に手が差し出されて思わず顔を上げると、そこには見知った顔が不思議そうにこっちを見下ろしている。
「中村くんじゃん、」
拍子抜けした私は無駄に大きな声を出して、彼はそれに少し驚いてからふっと笑った。
「だから何してんの」
「おばけ……」
「え?おばけ?」
何も知らないらしい中村くんを、一瞬殴りたくなった。