【短編】脇役少女は時を舞う
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思いがけず思い出した最初のシーン。

トリップしてから約二ヶ月。

紗菜は今、剣道の腕を買われ隊士に混じって稽古中だ。

私はと言えば、得意なことなどないので幹部の小姓という名の雑用係をしている。

どこへ行っても、同じ。

私は紗菜の影。

あれ以来紗菜と二人で仕事を任されることが多かったのだが、私が彼らと話すことはなかった。

『よう、紗菜に音。やってるな』

『はい!』

『こんにちは、原田さん新八さん』

『ほら紗菜も音みてぇに挨拶したらどうだ?』

『悪かったですね、音みたいにおしとやかじゃなくて!』

こんな感じで紗菜がいじられるのを見ていたり、

『音か。紗菜はどこだ?』

『土方さん。勝手場だと思いますけど』

『そうか』

紗菜の居場所を教える程度の会話。

でも別に、恨んだりはしていない。
慣れてるから。

紗菜は大切な幼馴染み。

私は紗菜が大好きだから。
紗菜はいつも私を助けてくれていたから。

私も紗菜が幸せなら、例え影だとしても辛くない。

私に笑いかけてくれるのも、紗菜だけだから。

「あれ、音?」

ハッと我に帰った。
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