初恋ノイズ
思い出の始まり
『みー地元帰って来てんの!?』
親友千里(チサト)の驚く声は強烈で、あたしは電話を離して耳を押さえる。
「千里。声大きいよ~。耳痛い。」
『ごめんごめん!あまりに唐突だからさ!てか、あんた!帰ってくる前に連絡くらいしなさいよ!』
相変わらずの千里の気を使わない物言い。
怒られてるのに何だかホッとする。
「厳密には、"今帰ってる"んだよ!まだ実家には着いてないんだ。今、駅着いたとこだよ。」
あたしは、持っている切符を通して改札を出る。
外に出た途端、真夏の熱気がもわっと顔に降り掛かり、思わず噎せ返りそうになる。
駅の看板にしがみついていた蝉が、ジジジと鈍い鳴き声を発しながら逃げ去っていった。
えっと……バス停はどっちだっけ?
『え?マジ?あんたの実家の最寄りの駅だから音羽町?』
「うん。そう。こっからバスだけどねぇ。」
あ!そうそう!確かあっちだ!
『駅周り大分変わったでしょ?あんたかれこれ3年はまともに帰って来てないもんね。』
「そうだっけー?」
『そうだっけー?ってあんたねぇ……。一体何で帰ってくる事になったわけ?黒崎とは一体……』
「あ!!!ごめん千里!!バス来ちゃってる!また電話するね!!」
『え!?こらっ、みー……』
―――――ピッ
慌てて通話を切る。