初恋ノイズ
「ご、ごめんね!先生に呼び止められちゃって!」
「あちぃ。早く乗れ。さっさと返るぞ。」
洸ちゃんは、イヤホンを取って自転車に股がる。
そして、あたしを振り返り、ポンポンと荷台を叩く。
「うんっ!」
荷台に座ろうとすると、
「吉川っ。」
後ろから呼び止められて振り返る。
「松田?どうしたの?」
あたしを呼び止めたのは、同じクラスの松田。
松田は、クラスの女子から王子って呼ばれてる男子。
女の子みたいに綺麗な顔をしていて、優しくて、女子から人気があるみたい。
どっちかって言うと、男くさい洸ちゃんとは正反対のイケメンさんって感じ。
松田は、走って来たのか肩で息をしている。
「あ、あのさっ。ちょっと、話があるんだけど。」
「今??」
洸ちゃんをチラッと見る。
ただでさえ待たせちゃったのに、これ以上待たせるわけには……
「俺先帰ってるわ。」
「え!?洸ちゃんっ……」
「話したいっつってんだから、聞いてやれよ。」
「でも……」
「心配すんな。カレーはとっておいてやるから。」
ニヤッと意地悪な顔をする洸ちゃん。
「じゃあ、後でな。」
「ち、ちょっと洸ちゃんっ!!」
残しておいて欲しいとか、そういうんじゃないんだけど!
洸ちゃんの乗った自転車は、校門を出てすぐに見えなくなる。