初恋ノイズ
思い出のカケラ
「お客さん?乗ります?」
目の前に止まったバスの運転手が、あたしに声を掛ける。
やだ!あたし!
本気で寝ちゃってた!!
「の、乗りますっ!」
バスに乗り込むと、空いている窓側の席に座る。
空調が効いている車内は涼しくて、漸く汗が引いていく。
ここからバス停五つで実家の最寄りのバス停に着く。
本当に久し振りの景色。
所々変わってはいるけれど、移り変わっていくどこか懐かしい景色に、自然と頬が緩む。
『次はー、千間神社前ー。』
あ。
ここ……。
懐かしいその場所の名前に胸が高鳴る。
『千間神社前ー。千間神社前です。』
沢山の提灯が飾られているその場所は、まだ屋台こそないものの、夏祭りの飾りが施されていた。
バスの窓から、電柱の張り紙を見ると、明日から二日間夏祭りをやるらしい。
そっか、毎年この時期だったっけ。