初恋ノイズ
「美晴。また大きくなったね。」
ママは、あたしに手際よく浴衣を着せながらそんな事を言う。
「どこが?あたし未だに背の順で一番前だよ?」
「そういう事じゃなくてね。大人になってきたなって。」
「……何それ?」
「ふふふ。」
全然大人になんてなっていかないよ。
洸ちゃんなんか、みるみる背が伸びて声も低くなって、どんどん大人の男の人になっていくのに、あたしなんて背は小さいし、胸だって白田さんみたいに大きくないし……全然大人になっていかない。
洸ちゃんばっかり先に行っちゃって、あたしはおいてけぼり。
ついこの間まで、同じ歩調で同じ道を歩いていたはずなのに、洸ちゃんはいつの間にかずっと先を行っていた。
もう、手を伸ばしても届かないようなずっと先に行ってしまった。
本当は……
本当は……
ずっと一緒に歩いていたかったのに……。
「美晴?何泣いてるの。」
「ママ……あたし……洸ちゃんに嫌われちゃった……。」
あたしは、落ちる涙を手の甲で押さえる。
それでも、ポロポロと地面に落ちる涙。