初恋ノイズ


「覚えてる?昔は背だって同じ位だったんだよ!背の順の一番前でこうしてさ!」


あたしは、腰に手を当てる。


洸ちゃんは、


「覚えてるよ。」


と言って、少し笑う。


「なのに、今は背だってこんなに違う。
声だってこんなに低くなって、肩幅だって広くなって。
さっきだって、あたしを軽々持ち上げて……。」


あたしに触れる手だって大きかった。


昔とは違う。


男の人の洸ちゃん。



「あたしの知ってる幼馴染みの洸ちゃんが、いつの間にかどんどん格好良くなっていっちゃうから、おいてけぼりを食らってるみたいで、少し……寂しかった。」


洸ちゃんは、あたしが話すのを静かに聞いている。


あたしの目を見て、表情を変えずに。


「でも、違ったんだ。
あたし、ただ怖かっただけなの。
洸ちゃんの隣に居られなくなっちゃうのが、洸ちゃんの隣に居るのがあたしじゃない誰かになっちゃうのが……ただ嫌だった。」


洸ちゃんの浴衣の袖を掴む。



今から言おうとしている事は、きっと私達の関係を変えてしまう……。


でも、伝えたい。


伝えなくちゃいけない。



心臓がバクバクと音を立てる。


だけど、不思議と嫌な気分ではない。


「あたし、洸ちゃんの側にいられるのなら、幼馴染みでもそうじゃなくても、何でもいい。
ずっとずっとあたしが、洸ちゃんの側に居たい。
あのね、洸ちゃん。あたしね……」




私達の間を風が流れていく。


洸ちゃんの柔らかそうな髪が、風に揺れて舞う。




「あたし、洸ちゃんの事が好き。」



< 63 / 100 >

この作品をシェア

pagetop