初恋ノイズ
「覚えてる?昔は背だって同じ位だったんだよ!背の順の一番前でこうしてさ!」
あたしは、腰に手を当てる。
洸ちゃんは、
「覚えてるよ。」
と言って、少し笑う。
「なのに、今は背だってこんなに違う。
声だってこんなに低くなって、肩幅だって広くなって。
さっきだって、あたしを軽々持ち上げて……。」
あたしに触れる手だって大きかった。
昔とは違う。
男の人の洸ちゃん。
「あたしの知ってる幼馴染みの洸ちゃんが、いつの間にかどんどん格好良くなっていっちゃうから、おいてけぼりを食らってるみたいで、少し……寂しかった。」
洸ちゃんは、あたしが話すのを静かに聞いている。
あたしの目を見て、表情を変えずに。
「でも、違ったんだ。
あたし、ただ怖かっただけなの。
洸ちゃんの隣に居られなくなっちゃうのが、洸ちゃんの隣に居るのがあたしじゃない誰かになっちゃうのが……ただ嫌だった。」
洸ちゃんの浴衣の袖を掴む。
今から言おうとしている事は、きっと私達の関係を変えてしまう……。
でも、伝えたい。
伝えなくちゃいけない。
心臓がバクバクと音を立てる。
だけど、不思議と嫌な気分ではない。
「あたし、洸ちゃんの側にいられるのなら、幼馴染みでもそうじゃなくても、何でもいい。
ずっとずっとあたしが、洸ちゃんの側に居たい。
あのね、洸ちゃん。あたしね……」
私達の間を風が流れていく。
洸ちゃんの柔らかそうな髪が、風に揺れて舞う。
「あたし、洸ちゃんの事が好き。」