初恋ノイズ
ゴンッ!
「いてっ!」
不意に頭に何か硬いものがぶつかって、その衝撃でよろめく。
洸ちゃんがスクール鞄をユラユラさせながら、後ろでニヤリとしていた。
「待たせたな。膝蹴り子。」
「こ・う・ちゃ・んー?鞄硬いよ!!結構痛いよ!!」
あたしが涙目で頭を抱えていると、ガシャンと音を立てて洸ちゃんが家の庭から自転車を出してくる。
「辞書入ってるからな。
乗ってく?げりこ。」
「もうそれ、最早意味が違うからやめて。」
「乗らないの?」
「………………乗る。」
もう。
洸ちゃんには、敵わないな。
昔から、意地悪だけど優しい洸ちゃん。
いつも傍に居て、空気みたいな存在の洸ちゃん。
あたし達の関係性が変わることなんて、この時のあたしは有り得ないと思っていたんだ。
微妙な変化に気付きながらも、あたし達は永遠に不変だと信じきっていた。
大事な事に気が付くにはまだ幼すぎたのかもしれない。
でも、それでも少しずつ大人になり始めていた、
15歳の夏――――――
「洸ちゃんもっとスピード出して!!講習始まっちゃう!!」
「バカ!これがこいつのフルスピードだわっ!!
お前重くなったんじゃね?」
―――――ゴスッ!!