初恋ノイズ


懐かしい……。


そこは相変わらず静かで、夏の虫の音色だけが響き渡っている。


さっきまで聞こえていたお囃子のBGMも、ここまで来るともう聞こえては来ない。



ここは、あの時と何も変わっていない。


変わってしまったのは、ここに洸ちゃんは居ないという事だけ。



あたしは、昔洸ちゃんと腰を掛けた石段に座る。



すると、あの夏の甘酸っぱい思い出が、また胸に蘇って来る。


初恋の音に気が付いたあの日。


洸ちゃんが、好きだと言ってくれたあの日。


あたしと洸ちゃんの心は、あの日一番近くにあった。


今は、何でこんなにも遠いの?


こんなにも、足並みが乱れてしまったの?



神様。



もう一度だけ。



もう一度だけ、あの頃のように洸ちゃんと足並み揃えて歩けたら。



今度こそあたしは、洸ちゃんから離れたりしないのに。
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