初恋ノイズ



「……俺が昔ここで言った事、覚えてるか?」


「え?」


「ふっ。さすがに覚えてねぇよなぁ。」


洸ちゃんは、小さく笑う。


「"俺が先を歩いてたとしても、お前が待って欲しけりゃいつでも立ち止まってやる"」


……あ。


あの夏の光景がキラキラと蘇る。


今あたしを抱き締めている洸ちゃんは、あの日よりずっとずっと大人の男の人だけど、あの日と同じ光景のように、あの日の洸ちゃんが重なって見える。


まるで、あの日に戻ったみたい。


涙が一筋頬を伝うのが分かった。


「俺だってさ、"お前が隣に居ないのはしっくり来ない"って言ったよな。そう思うのも、今だって変わってないんだぞ?

俺、お前と一緒に居るためにこれでも色々考えたんだ。そうしたら、一つ目標が出来た。その目標に向かって突っ走ってたわけだけど……」


洸ちゃんが体を離してあたしを見る。


「お前の事、ちゃんと考えてやれてなかったな。」


洸ちゃん……洸ちゃん……


あたしは、ブンブン頭を横に振る。

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