初恋ノイズ
「お前がもう少し待ってられれば、もっといいの買えたんだからな。これで我慢しろよ。」
洸ちゃんは、少し照れ臭そうにそんな事を言う。
「えっ!でもっ!!えっ!?」
まだよく洸ちゃんの言っている意味が分からなくて、指輪と洸ちゃんの顔を行ったり来たり。
「だからっ……!!」
そう言うと、洸ちゃんはうっと口をつぐむ。
そして、「はぁぁ~。」と大きな溜め息を付いて、その場に屈み込んで顔を伏せる。
あの夏の日がデジャヴする。
洸ちゃんがあたしの手を取る。
あの時よりも、もっと大きくてゴツゴツした手。
だけど、温かさは変わっていない。
「…………る?」
「……え?」
あたしは、あの夏と同じように屈み込んで洸ちゃんの声に耳を澄ませる。
「…………結婚する?」
「!!!」
そっか……そっか……。
洸ちゃんは、あたし達が側に居る方法を見付けてくれていたんだね。
そして、それに向かって走ってくれていた。