初恋ノイズ


その仕草も昔と変わっていなくて、あたしは思わず吹き出してしまう。


「なんだよ。」


洸ちゃんはばつの悪い顔をあたしに向けてから、そっと頬に触れる。


そして、洸ちゃんの唇があたしの唇と重なり合い、すぐに離れる。


「……久しぶり。」


「……っっ!もうっ!」


真っ赤になるあたしを見て、悪戯に笑う洸ちゃん。


意地悪だけど、優しい洸ちゃん。


あたしの胸に懐かしい音が響く。


トクン……トクン……。


優しい音。


あの夏の日に知った、初恋の音。


これからもずっと、ずっと、洸ちゃんにだけ奏でる音。




大丈夫。


この音が、いつだってあたしを導いてくれる。


あなたの元へ––––



また、洸ちゃんの唇が落ちてくる。




洸ちゃんはあの夏とは違う、ちょっと大人のキスをした。








初恋ノイズ <END>
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