それでも僕等は恋を繰り返す
―――そう、柊はあたしの好きな人…
誰にも言っていないこの想いを心に秘めながら、彼の大きな背中を見つめる。
彼女にならなくてもいい…ただこうして他の人よりも少し、ほんの少し近くにいれれば充分。
「夕顔、なんで後ろ歩いてんの?隣おいで」
その差し伸べられた手をどれほど嬉しいと感じているかなんて、彼は知らない。
握った手に願いを込める。―――彼女じゃなくていいから、どうか一緒にいれますように。
「ねえ、椿」
「ん~?」
「柊どうしたのかな?今日彼女と一緒にいるところまだ一回も見てないんだけど」
「…確かに。中学入ってから女切らしたことなかったのにね一日も」
「だよね…なんかおかしいよ。さっきだってずっと教室でカンナといたし。めずらしい」
学校では殆ど彼女といた柊だったが、今日は朝からあたし達と一緒にいる。
どうしたんだろう…なんかあったのかな…