一番がいい!!




アゴをグイッとあげられると、



智哉の顔が近付いてきた。



ギュッと目を閉じる。






……?



あれ?



あれれ?






このタイミングと言えば、恋愛小説でもドラマでも答えは一つじゃ…






何もないけど…?



アゴにかかっていた手が離された。






目を開けると、プイッと横を向いてしまう。




「こんなことしないって言ったのに、ごめん…」






そーだった…




あのとき…



誤解されたままだった…



立ち上がろうとする智哉の腕を捕まえる。




「違うの…

あのとき、泣いたのは…

智哉とキスしたかったから…」




「えっ?!…」




とても驚いた顔で見つめられる…




何言ってるんだ…私…




でも、一度言葉が出ると、止まらなくなって…




「あのとき、智哉とキスできると思ったら、嬉しくて…」




「イヤで泣いたんじゃ…」




首を横に振る。




ダメだ…止まらない…




「智哉が、静香センパイ好きなの知ってるのに…

私だけ好きでもいいって思っちゃってる自分がイヤで…

なんか頭の中がぐちゃぐちゃになってて…

知らないうちに涙が出てて…」




あのときのことを思い出したら、また涙があふれてくる。

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