空色canvas



家に帰ると最初に俺を迎えてくれるのは香水の香り。


菜央がつけてたローズの香り…


嫌でも思い出してしまう。

幸せだったあの頃を…



だけど気落ちしそうになる俺の背中を押すように、絵の具の匂いが鼻を刺激する。

匂いに誘われて見ると、シャツにはそのまま残る水色の絵の具。


それを見た途端、今朝の出来事を思い出して自然と顔が綻んだ。



“サヤ”


ニコニコ笑って満面の笑みを向ける。

本当は20歳なのに10歳だと言う彼女。


不思議な子だったな…



俺はその日、一週間ぶりに自分の部屋で眠りについた。


とても心地いい眠りだった気がする…。



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