本物の友達の基準って何?!
信頼って?
いつも通り静葉ちゃんと並んで学校に向かう。
あの日はあれから特に何もなく、少し話してから、メアドと携帯番号を交換して静葉ちゃんと別れて家に帰った。
イヤリングは机の上に飾ってある。
最近は放課後に残ることが多く、なかなか買い物に行けなかったが、今日の放課後は暇だから、アクセサリーケースを買いに行って、それにしまうつもりだ。
放課後に残っているというのも、最近の数学の授業で習っているところが苦手分野で、授業の内容で分からないところが多いため、静葉ちゃんと一緒に先生に聞きに行っているのだ。
今日は数学の授業がないため、放課後は暇なのである。
「今日は数学ないから遊ばない?」
と、静葉ちゃんに誘われるも、
「今日は用事があって…。」
と断る。
「えー、どんな用事?」
静葉ちゃんは頬を膨らましてムスッとすると、私を問い詰めた。
「買いたい物があるの。」
一瞬誤魔化そうか迷ったが素直に答えると、静葉ちゃんは不機嫌そうな顔をしつつも仕方ないなと呟いた。
「あ、そういえば、今日は席替えだね。」
ちょっと不満げな顔の静葉ちゃんの言葉にハッとした。
転校してきてから3週間程経ったが、あまり友達はできておらず、気軽に話せるのは静葉ちゃんと梨乃ちゃんと葵ちゃんくらいだった。
席替えして、うまく周りと馴染めるか、不安で不安で仕方がなかった。
ソワソワしたまま学校に着き、席に座る。
席替えは1時間目の道徳の時間にやるそうで、私は周りを見渡した。
そして、いい席になるようにひたすら心の中で祈っていた。
とうとう1時間目になって、くじを引いて、席を移動する。
席は窓際の後ろから2番目だった。
席の位置はまあまあだ。
「お、お隣さんは転校生か!
よろしくな〜。」
声をかけてきたのは、隣の席になった男子だった。
誰とでも仲良くなりそうな雰囲気を纏うその人は、笑顔でよろしくと手を振った。
「あ、よろしくお願いします。」
軽くお辞儀をして前を向くと、
「よろしくね、美澄ちゃん。」
前の席は葵ちゃんだった。
一方静葉ちゃんは、窓から2列目の一番前の席らしく、前の方から残念そうに私を見ていた。
梨乃ちゃんは葵ちゃんの隣、静葉ちゃんと同じ列の、前から4番目だった。
知ってる人が近くにいて、本当に安心した。
そして、隣の人がいい人そうで良かった。
「それじゃあ、次の時間は理科の実験だから、今のうちに班の人と仲良くなっといてね。」
先生がそう言うと、みんな一斉に机を動かし始め、4人で1つの班をつくっていく。
私も周りに合わせて班をつくるも、どう接すればいいか分からず黙っていた。
少しの間、沈黙が続く。
「んー、転校生いるし、まずは自己紹介でもするか!」
見かねた隣の席の人が仕切ってくれる。
1人1人自己紹介をしてくれて、私は真剣に話を聞きながら、なんとか顔と名前を覚えた。
桜月さんと奏多くん、そして隣の席の人は長瀬陽翔というらしい。
桜月さんは、桜の月と書いて“サツキ”と読むらしく、読みにくくてゴメンネなんて言っていた。
「全員のこと名前呼びで大丈夫だから!」
と言ってくれたので、お言葉に甘えて名前呼びさせてもらうことにした。
班員はみんないい人で、次の時間の理科の実験もスムーズにいって、本当に安心した。
1つ言えば、
「陽翔、美澄ちゃんの隣ズルい!」
と、ずっと陽翔くんに文句を言っている静葉ちゃんが気がかりだ。
静葉ちゃんは私のことを気に入ってくれているようだった。
「静葉って、美澄ちゃんのことすごく気に入ってるよね。」
と、仲良しの葵ちゃんが言うほどに。