本物の友達の基準って何?!
次の週。
土曜日に取りに行った新しい制服を着て学校に向かった。
「あ、制服新しい!」
と静葉ちゃんは私の制服を眺めていた。
そうしてうっとり眺めながら、時折、
「1年前を思い出すなぁ。」
と懐かしそうな表情をする。
その表情は、少し悲しげであった。
少し気になったけど、静葉ちゃんの寂し気な表情から聞くことはできなくて、
「1年前…ね。」
と、1年前を思い出すフリをした。
1年前にあったのは、菜摘と花梨に出会って、仲良くして。
いろいろあって、友達なんて、所詮上辺だけなんだって思ったくらいで、特に大したこともなかった。
静葉ちゃんみたいに、懐かしげに寂しげに思い出すことなどなかった。
だから、静葉ちゃんが何を思い出しているのか、少し気になった。
だけどあえて話には触れず、
「…そういえば、今日は数学ないよね?」
と露骨に話を逸らした。
静葉ちゃんは少し考えた後、
「うん、ないねー。
じゃあ、遊ばない?」
パァっと明るく微笑んでそう言った。
私はいいよと答える。
それから特に意味のない会話を繰り広げながら学校に。
「あ、美澄さん、おはよー。
制服こっちのになったんだね。」
教室にはいってすぐに陽翔くんに声をかけられる。
「あ、本当だ。制服一緒だねー。」
と、梨乃ちゃんや葵ちゃんにも声をかけられた。
私はかけられた言葉に1つ1つ返事をしてから、チャイムが鳴るまで静葉ちゃんと話をした。
そしてその昼放課のこと。
「ねぇ、美澄ちゃんちょっといい?」
梨乃ちゃんに話しかけられた。
私は全然いいよと微笑む。
梨乃ちゃん越しに静葉ちゃんの席を見てみると、毎放課やって来る静葉ちゃんはそこにいなかった。
「話したいこと、あるんだけど…。」
そう言い梨乃ちゃんは廊下をちょいちょいと指差した。
きっと、教室では話しにくいのだろう。
私は素直に席を立ち、歩き出した梨乃ちゃんの後を追った。
人通りの少ない廊下に来ると、梨乃ちゃんは立ち止まり私の方を向く。
「あのね、唐突なんだけど…。
どうしてそんなに必死なの?」
梨乃ちゃんの真剣な目が、私を捉えた。
「え、何が…?」
梨乃ちゃんの目を見た時点で、なんとなく気づいてはいた。
恐らく静葉ちゃんのことだろうな、と。
だけどわざとはぐらかしてみた。
梨乃ちゃんは少し考えた後、私から目を逸らし、気まずそうな顔をした。
「なんかさ、静葉に気に入られてるみたいだけど、一緒にいようと必死というか…。」
えーっと、と言葉を濁す梨乃ちゃんをじっと見つめると、梨乃ちゃんは私の視線に気付いてかしゅんと下を向いた。
「私の単なる嫉妬なんだけどね?
静葉が“ただの友達”作るのが珍しくって。
私なんて信用信頼されてるだけで、わがまま言われ放題だし…。」
梨乃ちゃんの言った、“ただの友達”という言葉がグサリと突き刺さる。
あの時天使様が例に出したくらいだから、きっとそうだろうと覚悟はしていたけれど、人に言われてみると結構辛い。
確かに私はまだ転校してきたばかりで、信頼できるようなきっかけもないけれど、あれだけベタベタくっついてきて“ただの友達”かと思うと、少し寂しかった。