本物の友達の基準って何?!



ただ、寂しいは寂しいけれど仕方がない気もした。

上辺だけの付き合いしかなかった私なんか特に、信頼できる人は1人で十分だとは思うし、

もうすでに信頼できる人がいるのに、わざわざ増やす理由もない。

信頼できるなんて、自分が思ってるだけで相手からはどう思われてるのか分からないわけだし、

信頼できる人物を増やすのはデメリットしかない気もするのだ。

だから、もし本当に静葉ちゃんが私のことを“ただの友達”だとしか思ってなくても別にいい。

…前の私なら。


でも今はどうしても、必死になる理由がある。

それを、目の前にいる梨乃ちゃんに正直に言えるはずもなくて、

「別に、必死になんてなってないよ。」

と嘘をついた。

本当は少し、必死になっていたのかもしれない。

静葉ちゃんとあれだけ仲良くしてもらってる分、静葉ちゃんに見捨てられたら1人になってしまう。

1人になれば、集団心理というやつでみんながあまり近寄らなくなって、それだけ友達も作りにくくなるわけで。

それだけは避けたいのだ。

今の私は、孤立することを恐れている。

孤立することは、自殺行為だからね。


「ふーん。必死になってるっぽいんだけど…。

やっぱ、孤立するのが怖いとか?」

梨乃ちゃんの言葉につい反応してしまった。

静葉ちゃんそっくりのフワフワガールだと思っていたのに、思った以上に鋭くて驚いた。

すっと梨乃ちゃんから目をそらす私を見て、梨乃ちゃんは

「大丈夫大丈夫。

静葉は大分美澄ちゃんのこと気に入ってるみたいだし、孤立なんてしないでしょ。」

とニコニコと笑う。

少し、ホッとした。

静葉ちゃんに直接言われたわけじゃないけど、それでも静葉ちゃんと仲良い人に“孤立なんてしないだろう”と言われるのは安心する。

そんな私を見てか、梨乃ちゃんは思い出したように笑い、一歩私に近寄る。

私がどうしたのかと首を傾げていると、梨乃ちゃんはニコリと怪しげに微笑んで、

「木村このは…って知ってる?」

と尋ねてきた。

知らないと首を振ると、梨乃ちゃんは一瞬勝ち誇った笑みを浮かべて、すぐにそっかと何かを考える。

「木村このはって、同じクラスじゃないしね。」

とさらっと私が言うと、梨乃ちゃんはパァっと明るく笑って、

「そっか、そうだよね!」

と、ふふっと笑みを零した。

「それで、その子がどうかしたの?」

私が尋ねると、梨乃ちゃんは手を振り首を横に振り、

「ううん、なんでも。大したことじゃないから。」

とだけ言って、さっさと去っていった。

取り残された私は、しばらく梨乃ちゃんの背中を見つめていたが、

チャイムが鳴ったのに気付き、慌てて教室に戻った。

< 17 / 54 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop