本物の友達の基準って何?!
運命的な…
***
「…大変そうだね、美澄さんも。」
「まあ、ね。」
あの日、葵ちゃんと話した日からしばらく経って、天使様が夢に出てきたので一応現状を報告した。
転校して来て約2ヶ月目、早速詰んでしまって、どうするべきか首を傾げる。
天使様は答えに困った顔をして、少しの間考え込んでしまった。
「壁を作れば壁を作られる。
距離を取れば距離を取られる。
でもさ、私にはその壁を壊すことも距離を縮めることもできないし、その気もない。
だけど信頼を得ようとするのは、やっぱ単なるわがままなのかな。」
ハァっとため息をつくと、天使様もため息をついてから私を見た。
「なんでその気にならないの?」
天使様の質問に、思わず天使様を睨みつける。
…天使なんだから、なんでもお見通しのはずなのに、わざわざ聞いてくるあたり性格が悪い。
悪魔みたいな性格だ。
私はジッと睨んだ後、ふいっとそっぽを向いた。
歩み寄れば相手からも寄ってきてくれるなんて、ただの幻。
実際はある程度距離取って、嫌になれば見捨ててきて。
仲良いフリして陰で悪口言って、嫌だと思えばバレない程度に仲間はずれにして嘲笑う。
私は、そう学んだ。
菜摘や花梨から、そう学んだから。
だから、相手がどうであれ、ある程度距離を取っておく。
近寄って、距離を縮めようとしたら、最後に傷付くのは私なんだから。
「…でも、そう考えると、静葉ちゃんや梨乃ちゃんや葵ちゃんが、なんだか怖い。」
ふと呟く。
天使様は何も言わなかった。
「そうだね」とも、「そんなことない」とも、なんにも言わない。
ただただ私の顔を見ては、自らの左手にある何かを見ていた。
そうしてスッと立ち上がると、
「僕は用事があるのでこれで。」
なんて言って消えていく。
「はぁ?ちょっ、」
引き止めようとして手を伸ばすも、ぐらりと視界が歪んで、意識を手放した。
ふと目を覚ますといつもの天井が目に入る。
…ったく、あのヤブ天使が。
と勝手に去って行った天使様に心の中で毒づき、時計を見るともうすでに起きる時間だった。
さっさと準備をして家を出て、いつも通り静葉ちゃんと登校する。
いつも通りのはずなのに、葵ちゃんと話したあの日から、なんだか空気が重たくて、
気持ちもズンっと沈んでしまう。
そんな日々がしばらく続いたある日、転校してから約2ヶ月と1週間後。
夏休みを翌週に控えていて、その週の金曜日には終業式のある。
そんなある日、珍しく静葉ちゃんが休んでしまって、私は放課ずっと暇だった。
葵ちゃんや梨乃ちゃんが話しかけたりしてくれるし、他の子たちも話しかけてくれるけど、会話が続かない。
そのうち暇になってしまって、廊下に出てみてその辺をぶらぶらと歩いていた。
適当に学校探検でもしてみるかと階段を降りて別の階へ向かう。
その途中、踊り場の掲示板が気になってよそ見をしていると、バシッと肩に何か当たる。
誰かとぶつかったと分かるまでにそう時間はかからなかった。
バサバサッと音がして、ぶつかった相手の足元にプリントが落ちていた。
「ご、ごめんなさいっ。」
ぶつかった相手は慌てて謝ると、散らばったプリントを拾い始めた。
私もしゃがみ込み、プリント拾いを手伝う。