本物の友達の基準って何?!
ある程度拾い上げた後、プリントを手渡す。
「ありがとうございます!」
ぱぁっと明るい笑顔でお礼を言うその子の、三つ編みで1つに結ばれた黒髪が揺れる。
そしてハッとした。
その子の名札には、確かに『木村』と書かれていて、その笑顔は以前静葉ちゃんの部屋にあった写真の中の木村このはにそっくりであること気が付く。
一応聞いてみようと思った時、
「もしかして、転校生の倉井美澄さん?
私は木村このは。」
そう自ら答えてくれた。
なぜ同じクラスでもないのに、私の名前と転校生であるのを知っているのか疑問に思っていると、
「あのっ、メアド交換しませんか?
私のことはこのはって呼んでください。」
このははニコリと笑ってメモを渡してきた。
メモにはメアドと電話番号が書いてあった。
「うん、登録しとくね。」
私はニコリと微笑んで、メモを折りたたみ胸ポケットにしまった。
私がスッと立ち上がると、つられてこのはも立ち上がる。
このはは私から目を逸らし下を向くと、
「…あの、友達になっていただけませんか?」
今度は真っ直ぐ私を見据えてそう言った。
そっと差し出された手を、私はしばらく見つめていた。
どうするべきか、少し分からなかった。
静葉ちゃんが嫌いだと言ったこのはと友達になれば、静葉ちゃんとの距離が空いてクラスで立場が悪くなるのは目に見えている。
だけれど、この手を拒めばきっと後悔するだろう。
『出会いを大切にすること。』
天使様の言葉が頭の中を横切る。
このはが首を傾げて私の顔をのぞき込んだ。
私はニコリと笑うと、
「もちろん。
よろしくね、このは。」
と差し出された手を握りしめた。
パッとこのはの顔を見ると、嬉しそうに笑っていた。
「ところで、それは?」
話を切り替えようと、このはの持っているプリントを指差した。
このははハッとして肩をすくめた。
「クラスの子に、「暇でしょ?」って押し付けられちゃって。」
よく見るとプリントも結構な量があって、このはは重たそうに持っていた。
「半分持つよ。」
私がそう言うと、このははすごく嬉しそうな笑みを浮かべて、少し照れながらありがとうと呟いた。
プリントを半分持ってこのはについていくと、たどりついたのは職員室だった。
このははこんな雑用に慣れているのか、さっさと先生を呼んでプリントを渡した。
その後深々とお辞儀をされて、ちょっと照れくさかった。
このはは隣のクラスらしい。
教室の前で別れて席に着いたところで、ちょうどチャイムが鳴った。
慌てて授業の準備をしながら、胸ポケットの中に入れたメモを確認した。
…家に帰ったら登録しとこう。
そう思いメモをしまった。
あっという間に放課後になって帰りの準備を済まして帰ろうとすると、
「あの、美澄ちゃん、お願いがあるんだけど…。」
と梨乃ちゃんが声をかけてきた。
梨乃ちゃんからお願いされるなんて、珍しいと思い、
「なに?」
と梨乃ちゃんのお願いを聞くことにした。