本物の友達の基準って何?!
そんな静葉ちゃんに声をかけれず下を向く。
私の様子を見て、静葉ちゃんは申し訳なさそうに笑うと、
「そんなことよりお菓子食べない?」
と言って部屋を出て行った。
しばらくして戻ってきた静葉ちゃんの手には、いつかのスナック菓子の袋があった。
「お菓子、いいの?」
私も重い雰囲気を変えるために、明るく話しかける。
静葉ちゃんは一瞬ホッとした顔をして、スナック菓子を机に置いた。
その後は2人でお菓子をつまみながら長々と話していた。
しばらくして時間を確認すると5時半で、そろそろ帰ると静葉ちゃんに伝える。
静葉ちゃんは悲しそうな顔をしていたが、強く引き止めることもなく、
「また来てね!」
と笑顔で送り出してくれた。
静葉ちゃんの家の玄関を出ようと扉に手をかけると、いきなり扉が開いて誰かが顔をのぞかせた。
小5くらいの女の子と、その後ろに母親らしき人がいて、慌ててお辞儀をした。
恐らく小5くらい子は静葉ちゃんの妹さんで、後ろの方がお母さんだろう。
妹さんはふわふわとした雰囲気が静葉ちゃんとそっくりで可愛らしかったが、声には出さないようにした。
「あら、静葉の友達?」
ニコリと微笑む女性は、表情とは裏腹に冷たい視線を私と静葉ちゃんに向けた。
「はい、今日は静葉ちゃんのお見舞いに来ました。
お邪魔しました。」
一礼をして、静葉ちゃんに手を振ってから静葉ちゃんの家を出た。
早足で家を出て少し歩いてから振り返る。
静葉ちゃんのお母さんは結構綺麗な人だったけど、少しキツそうで怖かった。
さっきのことを思い返しながら、今度はゆっくり足を進めた。
静葉ちゃんの妹さんとお母さんはそれぞれ袋を持っていて、買い物をした帰りだということが分かる。
それも、どうやら中身は洋服のようだった。
静葉ちゃんが頭痛で学校を休んでいるというのに、お母さんは看病もせずに妹と買い物。
それもいつでもできるような買い物を、何時間も。
静葉ちゃんがわがままになったわけが、少しわかる気がした。
そして、静葉ちゃんの前で妹の話をしてはいけない理由がよく分かった。
家に帰ってからは、静葉ちゃんに一言メールを送った後、このはからのメールに返信した。
その次の日は、静葉ちゃんもすっかり元気になったようで、いつもの集合場所で私を待っていた。
たわいない話をしながら、学校へと向かった。
前日もたくさん話をしたというのに、話が尽きないのが不思議である。
そうして下駄箱について靴を履き替えたところで、
「あ、美澄ちゃんに静葉ちゃん、おはよう。」
このはが声をかけてきた。
静葉ちゃんにイジメられていたと聞いていたのに、そんな素振りもなく、フワリとした笑顔で挨拶をしてきたこのはに、私も挨拶し返した。
逆に何も言わない静葉ちゃんを見て、私が「どうしたの?」と首を傾げると、静葉ちゃんはいきなり私の腕を掴んで、
「美澄ちゃん、行こっ。」
と言ってこのはを無視してスタスタと歩き出した。
数秒前までは、静葉ちゃんがこのはをイジメていたなんて嘘かもと思ったけど、こうして静葉ちゃんがこのはを無視した現場を見ると、本当なのかもと思ってしまう。
でも、静葉ちゃんに直接聞くのはなんだか嫌だし、だからといってこのは1人の意見で決め付けるのはおかしいだろうし。
梨乃ちゃんは教えてくれないだろうし、葵ちゃんはそもそも葵ちゃんにこのはがイジメられていたと聞いたんだし。
これからどうこの問題を解いていけばいいのかさっぱりだった。
ゲームでいう、詰んだ状態。