本物の友達の基準って何?!
静葉ちゃんはチラッとこのはを見て、スッと視線を逸らした。
まるで私は悪くないというような素振りにムッとしたが、我慢我慢。
「なんでイジメたの?」
一歩近付き静葉ちゃんを問いただす。
しばらく静葉ちゃんは黙っていたが、私が首を傾げて近寄ると、静葉ちゃんはギュッと拳を握りしめた。
「だって、こいつが美澄ちゃんを横取りしようとするんだもん!
このはのくせに!」
静葉ちゃんはそうこのはに怒鳴り付けると、ふいっとそっぽを向いた。
幼い子供のように目を潤ませている静葉ちゃん。
「…私は別に静葉ちゃんのものでもこのはのものでもないよ。
私は静葉ちゃんともこのはとも仲良くしたい。
ダメかな?」
若干呆れた口調で私が言うと、
「そんなのダメ!」
と静葉ちゃんが強く言い返した。
それほどまでにこのはを拒否する訳が分からないが、静葉ちゃんの真剣な目からして雰囲気からして、説得するのは難しいだろう。
即答で自分の意見を否定されてしまった私は、どう説得するべきかと考えた。
そんな私を静葉ちゃんはジッと見つめていた。
私の返事を待つように、ジッと見つめる。
「あ、そうだ!
美澄ちゃんもこっち側おいでよ。」
さっきまで私と静葉ちゃんのやり取りを見ているだけだった梨乃ちゃんが、ふと口を挟んだ。
予想外の言葉に、思わず「は?」と聞き返してしまった。
梨乃ちゃんはニコニコと笑みを貼り付けている。
私は、イジメなんてする気はなかった。
だからハッキリと、
「私はどっち側にもつかない。」
と答えた。
どっち側でもないのは本当だ。
静葉ちゃんだけが悪いとは思っていない。
事情もよく知らないし、イジメに発展したのには何か理由があるっぽいから。
だけど、イジメはいけないことだから、静葉ちゃん側につく気はない。
あくまで中立的な立場でいる気だった。
これが私の意見だった。
梨乃ちゃんは私の答えが気に入らなかったのか、少し考えた後、
「じゃあこっち側来ないとイジメるよ。」
冷たい笑みを浮かべてそう言い放った。
いきなり脅されて戸惑ってしまう。
静葉ちゃんは梨乃ちゃんの発言に、
「友達なんだから、こっち来てよ。」
と付け足した。
このは側につくと言えばイジメられるのは分かってたから、わざと中立的な立場でいようと思ったのに、そううまくはいかないようだ。
正直イジメられるのは嫌だった。
私は考えるフリをした。
本当は、このまま中立的な立場でいるべきだって分かってる。
嫌むしろこのはを庇うべきだと分かっている。
だけど、イジメられるのは少し怖い。
一息ついて、
『間違ってることをやらないこと。』
ふとあの天使様の言葉を思い出した。
間違ってること、それはもしかしたらイジメのことなのかもしれない。
間違ってることをやらない、つまり今の状況でいえば、イジメをやらないこと…。
グッと下唇を噛んで、一歩前に出た。
「私は、イジメなんてやらないから。
まだこのはのことイジメる気なら、邪魔するから。」
ハッキリキッパリとそう言い、拳を握りしめた。
ジッと静葉ちゃんを見つめると、静葉ちゃんは舌打ちをすると、そのままどこかへ行ってしまった。
梨乃ちゃんと葵ちゃんもその後を追う。
葵ちゃんは2人に気付かれないくらいに振り向くと、両手を合わせて首を少し傾げた。
何に対してかは分からないが、恐らく「ごめん」と言っているのだろう。