本物の友達の基準って何?!
再び顔を見合わせ、言っていいのかななんて首を傾げ合う。
そうして心音ちゃんは唇に人差し指をあてて「静葉ちゃんには言わないでね」と言うと、顔を私の耳元に近付けた。
「去年、静葉ちゃんの目の前でこのはちゃんに話しかけたことあるんだけど、話の途中で静葉ちゃんに連れて行かれちゃってさ。
それが何度も続いた上に、このはちゃんのいないところで「このはに近付くな」って言われて…。」
えへへと苦笑いする心音ちゃんを見て、なるほどなと納得する。
静葉ちゃんなら言いそうな台詞。
偏見かもしれないけど、確かに静葉ちゃんなら言いそうなのだ。
まあ、そういうとこも静葉ちゃんらしいけど。
それなら近付かない理由も分かる。
私はそっかと呟いた。
それを見て話ができると思ったのか、栞ちゃんはひょいと心音ちゃんをかわして私に近寄った。
「美澄ちゃん知らないだろうけど、静葉ちゃん嫌われてるよ。
わがままだし自分の思い通りにいかないと怒るし、自分勝手だし。」
さりげなく静葉ちゃんの悪口を言う栞ちゃんを、私は冷たい目で見据えた。
「へぇ、そうなんだ。」
私は軽く答えた後、3人のことをジロっと見つめた。
別に話しかけてくれなかった理由は私が聞いたんだから、どんな内容でも聞き入れたけど、それに私が納得したからと簡単に人の悪口を言う栞ちゃんに少し腹が立ったのだ。
偽善者かもしれないが、そうであろう。
仮にもある子の友達に、そのある子の悪口を言うだろうか。
いや、言う人もいるだろう。
だけど私は絶対に言わないし言わないでほしい。
影でこうやってこそこそと悪口言って相手の友達を減らそうとする奴らより、言いたいことハッキリ言っちゃう静葉ちゃんのが良い。
まあ、静葉ちゃんもイジメをするような子だけど。
「別に私は静葉ちゃんが嫌われてようが関係ないかな。」
ニコッと笑ってサラリとそう言うと、3人は少し驚いた顔をした。
驚く要素あったかなと考えながらも見ていると、
「そうなんだ。よくつるめるよね。
しおなら無理だよ。」
栞ちゃんはそう言ってニコニコ笑っていた。
その言葉にムッときた私は、席を立ち上がろうとして、やめた。
ちょうどチャイムが鳴ったのだ。
私から去らなくても向こうから去ってくれた。
ナイスタイミングなチャイムに心の中でナイスと意味なく声をかけた。
授業は社会だった。
班で話し合う内容で、理科とは違い6人班を作る。
席で班を決めるから、自然と梨乃ちゃんと葵ちゃんと私は同じ班になってしまうわけで。
私達の間では、陽翔くんたちにも分かるような気まずい空気が流れていた。
「とりあえず、これについてだけど…、」
そんな空気をかき消そうと、陽翔くんはみんなに話を振った。
同じ班の桜月さんと奏多くんは陽翔くんと一緒に話し合いを始めた。
私も会話に入り込み、4人で話し合う。
時折陽翔くんが梨乃ちゃんや葵ちゃんに話を振るけれど、2人は曖昧に答えていた。
なんとか話をまとめて発表をすることはできたけど、気まずさは増すばかりだった。
重たい空気に押し潰されそうな中、放課になってしまい、梨乃ちゃんと葵ちゃんは静葉ちゃんとともにどこかへ行ってしまった。
「なんだお前ら喧嘩でもしたの?」
静葉ちゃんが教室から出て行ったのを見送った陽翔くんは、私の席の前まで来てそう聞いてきた。
陽翔くんは葵ちゃんの席に座ると、私の方を向いて頬杖をついた。
「うん、ちょっとね。」
曖昧に答えてニコッと笑うと、
「へぇ、アイツと喧嘩とか何したの。」
と陽翔くんもからかうようにニコッと笑った。
何をしたかなんて、静葉ちゃんとああなった原因は分かりきってはいる。
ただ人に言うことではないなと思った。
それもこのはがイジメられていたことを知らない人にわざわざ教える意味もないだろうと思った。
「何したのかね。」
ふふっと笑ってそう言うと、私が原因を知っていても教えないと分かったのか、呆れ顔で席を立った。
「まあ、早く仲直りしろよ。」
陽翔くんはそう言って席に戻っていった。
仲直りの前に、問題を解決させないとなと考えながら、小さくため息をついた。