本物の友達の基準って何?!
そこをなんとか近寄ろうと、人の波を押しのけて教室の扉の前まで近寄る。
教室の扉を開けようとした時、
「鍵かかってるから開かないよ。」
ふとそう言う声がした。
後ろを向くと、見知らぬ誰かが立っていた。
恐らく彼女もまたこのクラスの人と帰るべく、教室まで迎えに来た人だろう。
どういうことと言いたげに首を傾げると、彼女も同じように首を傾げた。
「なんか、イジメがあったみたいで、イジメられっ子の方が反撃中みたい。
イジメてる側が面白がって鍵かけちゃったんだよね。」
「えー、イジメ?なにそれ最低じゃん。」
私の後ろで話をし始める彼女とその友人たち。
昨日のこのはの言葉を思い出して、教室の扉の窓から中の様子を伺った。
中には強く必死に言い返すこのはと、平然な顔しながら立つイジメっ子の萌香と、このはに言い返す萌香の連れ、それから傍観者であるクラスの人がいた。
クラスの人はさすがにヤバいと思っているのか、萌香たちを見ながらヒソヒソと話をしていた。
このはが手伝いはいらないと言ったから、私はしばらく手出しせず見ていることにした。
けれどその直後、萌香の連れが、このはの頬を思い切り叩いた。
その音は騒がしい廊下の方にも響いてきて、クラスの人も萌香たちを止めようと思ってるのかザワザワとしてきて、廊下にいる人も一旦静まり返って再びざわつきだした。
このはは痛そうに頬をおさえていて、必死に諭すこのはの言葉を遮るように手を出した奴に怒りを覚えた。
私は前の扉と後ろの扉の間にある窓の方まで行き、そっと窓を少し開けた。
鍵はかかってないようで、一息ついてから思い切り開ける。
「あの、このはいますか?」
何も知らないのを装ってそう声をかけて、このはを見つけたら手を振った。
ニコリとこのはに笑いかけた後、萌香とその連れを睨み付ける。
「さっきそいつがこのは殴ってるの見たんだけど、イジメ?
4対1とか卑怯だよね、最低。」
冷たい声でそう言いイジメっ子たちを睨み付けると、すかさず私から目を逸らす。
私の最低の一言から、クラスの人が一斉に最低だとコールし始め、それにつられて廊下の人たちもコールし出す。
私はそれを制するために壁を思い切り殴った。
静まり返るその場。
「でもさ、見てみぬフリしてたクラスメートも同罪だよね。
このは以外、あんたら全員最低だよ。」
図星だったのか、何も言い返せずにいるクラスメートたち。
そして、クラスメート以外の人たちがたくさんいる中最低と言われたためか、萌香たちも何も言わなかった。
廊下にいた人たちはクラスの中の人達に呆れたのか幻滅したのか、人を待ってたはずなのに、そそくさと帰って行った。
「このは、帰ろ〜。」
私はニコッと笑いかけてそう言うと、このはもニコリと笑って頷いた。
そうして急いで鞄を持って教室を出ようとした。
しかしさっきの報復でもしたいのか、連れの1人がこのはの行く手を阻む。
私はそいつを睨み付けると、
「どけよ。」
と脅しをかけるようにそう言った。
驚きスッとそこをどいたそいつを無視して、このはは教室の鍵を開けて出てきた。
そうして嬉しそうに微笑むと、私の手を取って歩きだした。
靴を履き替えて家路につくと、このはは突然足を止めて私の方を向いて微笑んだ。
「さっきはありがと、助かった!」
そう言ってニッと思い切り笑うと、私の腕に自分の腕を絡めた。
手伝わなくて大丈夫だと言っていたのに、結局口を出してしまって、怒られると思っていたけどそれは違ったようで。
「周りの人は全然私の話にノッてくれないし、数人対1人で不利だったし、だからと言って萌香ちゃんだけ責めるのもね…。
クラスの人達だって罪はあるのに、なんかスッキリはしなくて。
だからあそこで美澄が、「見てみぬふりも同罪だ」って言ってくれて、スッキリした!」
ルンルン気分でそう言いながら、嬉しそうにフフッと笑うこのはを見て、私は良かったと胸をなでおろした。
明日からイジメがあるかないかが肝心だけど、ひとまず第一段階はクリアだ。