本物の友達の基準って何?!




そうして次の日は何もなかったらしく、このはも少し安心した様子だった。

宮野にも告白したらしく、予想通り宮野と両思いだったそうで付き合うことになったそうだ。

私はその日、家に帰ってからレターセットを買いに行き、それぞれ手紙を書いた。

お父さん、お母さん、このは、陽翔くん、静葉ちゃん、それから梨乃ちゃんと葵ちゃん、そして、天使様へ。

手紙を残し、生きてる間に見つからないように引き出しの奥へしまっておいた。

そうして御守をそっと握りしめてその日は眠った。

けれど、天使様が夢に出てくることはなくて、会えないことに少し寂しさを感じた。

そうしてその次の日。

これでこのはと遊ぶのは最後になるかもしれないと覚悟し、このはの家で遊んだ。

お菓子を頬張りながら、ジュースを飲みながら、惚気話や学校での話をした。

このはは、クラスメートのみんなが謝ってくれたらしく、雰囲気からか萌香やその連れも謝ってくれたそうだ。

それからはみんな普通に接してくれているらしく、友達も出来たと喜んでいた。

そんな中、このはの机に飾ってあった黒に近い紫色の、怪しい雰囲気のある御守が目に入った。

天使様が渡した物ではない気はした。

けれど、雰囲気というか模様というかなんというか、それがなんだか天使様にもらった御守によく似ていた。

「この御守って、誰からもらったの?」

ふとこのはに聞いてみると、このはは驚いた様子で、

「あ、友達…だよ。」

そう誤魔化してきた。

何か言いたくなさげだったため、それ以上は問いつめなかったけれど、少し引っかかった。

「それじゃあ、そろそろ帰るね。

…このは、ありがとう。」

時間になって帰る時、私はそう言ってこのはに笑いかけた。

最後のありがとうにはいろいろな意味が込められていて、涙が零れそうになるのを必死に抑えてこのはの家を出た。

明日も会える、だけど1つのケジメとして、その日は存分に泣きじゃくった。

そうしてまたいつも通り過ごして、眠って、それを幾度か繰り返して気付いた。

天使様に最後に会ってから、とっくに1ヶ月が過ぎていた。

それでも私は生きていて、心底ホッとした。

そうして11月になったある日、事件が起きたのだ。

その日は偶然実行委員に任命されてしまい、帰りはこのはに待っててもらうことにした。

委員会は意外と長くて、30分程このはを待たせてしまった。

悪いことしたなと反省しつつ下駄箱の方へ行くもこのはの姿はなく、しかし靴はまだあって。

疑問に思い教室に向かうと、私の教室の方から話し声が聞こえてきた。

1つはこのはの声だったけど、もう1つは。

気になりそっと教室の中を覗き込んだ。

そこには、私の席に座るこのはと、自分の席に座り楽しそうに話す陽翔くんがいた。

2人で待っていたのかもしれない、陽翔くんも友達を待っていたのかもしれない。

そうは分かってはいたものの、楽しそうに楽しそうに会話する2人を見て、その間に割り込む勇気がなくて。

私はそっと下を向いた。

刹那、このはがこちらを見た気がして、その視線が私を貫いて、それに耐えかねた私はその場から走り去った。

パタパタとスリッパの音が、誰もいない静かな廊下に鳴り響いた。

階段を下りる時、突如教室の扉がガラリと開いた音がしたけれど、私はそれにも気付かず無我夢中で走り去った。

走って走って、家へと帰る道を走っていると体力の限界が来て、激しい息切れに苦しさを感じながら、涙を流した。

裏切られたとかそんなのじゃなくて、ただの嫉妬で、とてもとても醜かった。

だけど、間に割り込めないあの空気と、楽しそうな雰囲気が嫌で嫌でたまらなくて、私はまた2人から逃げるように歩き出した。

今日は1人になりたかった。

誤解なら明日解いてくれればいいから。

そんな気持ちを抱えながら1人歩く。

乱れた呼吸を整えながら、重い足を動かして家へと向かって真っ直ぐ歩いていった。

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