死んでもずっと友達だよ
思い出の海
〈 夏希、もう止めてよ。

もう私に話しかけないで!

私たちはもう、友だちなんかじゃない。

お願いだから、一人にさせて! 〉




翔子は部屋の隅で震えながら、そう願っていた。




でも、そんな翔子の願いとは裏腹に、夏希は翔子に話しかけた。




「翔子、私の一番の思い出はね、みんなと海に行ったことなの。

私たち、グループチャットのメンバー六人ではしゃいだあの夏の日を私は絶対に忘れないわ」




〈 夏希、もうそんなこと忘れてよ!

海の思い出だけじゃない。

私たちのことをまとめて全部、忘れて。

夏希はもう死んだの。

私は夏希に関わりたくないの 〉




「私は花柄の浮き輪を持って、みんなと一緒に海で泳いだ。

和也は泳ぎが本当に上手で、翔子は浮き輪なしでは泳げなくて……。

あの日、私は嫌なことを全部忘れて、笑ってた。

私が本当に幸せだと思えたあの日。

私はあの日に帰りたい……」
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