描きかけの星天
ザッと庭の砂利を踏む音に振り向くと、カーテンの向こうに黒い影。
正確にはカーテンと網戸の向こう側から、
「ヨシ、居るの?」
と聞き慣れた声で呼びかける。
「コウちゃん? ヨシ兄(にい)は部屋で寝てるよ」
「なんだ、涼子か……」
勢いよく網戸が開いた。
カーテンをかき分けて顔を覗かせたのは、二歳年上の兄、由規(よしのり)と同じ歳で幼馴染みの浩介(こうすけ)。黒いTシャツと半パンにサンダルを履いて、暑さなんて堪えてないような涼しげな顔をしている。
額に汗の粒がぽつんと光った。
「さっき、なんだって言ったでしょ?」
「いや、そんなこと言った?」
コウちゃんはとぼけた顔をして、カーテンを押し退けて腰を屈める。短パンから伸びた逞しい太ももが、がっしりした大きな手が、陽射しに焼かれたフローリングへと着地する。
『そこ、熱くなってるよ』と言おうとしたのに手遅れだった。
「あっ……」
「あっちぃ……」
着地したのはほんの一瞬。
飛び上がったコウちゃんの額の汗が、丸い粒になって空に舞う。陽射しに照らされてキラキラ輝く汗の雫とコウちゃんの白い歯の眩しさに目を逸らした。