描きかけの星天

コウちゃんの腕が私の腕に触れて、ぺっとりと張りつくような感覚と湿っぽい温かさ。
うんと押し返したら、コウちゃんが驚いたように目を見開いた。



「警戒しすぎ、怒ってんのか?」

「怒ってないけど、昔っからコウちゃんって幼いよね」

「は? 俺が?」

「そう、ヨシ兄も大人げないけどコウちゃんも。つまんないことするよね」



ちょっと言い過ぎかな? 
と思いながら、コウちゃんの手からおにぎりを奪い取る。追いかけてくるコウちゃんの手を避けて、おにぎりを両手で包み込んだ。

ガードした背中越しに、コウちゃんの溜め息が聴こえる。



「つまんないとか言うなよ、俺は涼子と一緒に花火観に来れてよかったと思ってんのに……」



波消しブロックに飲まれる波の音に、コウちゃんの声が紛れて消えていく。しっとりした声の余韻なのか、波の音かわからないけれど胸がざわざわと騒ぎ始める。

鼻を啜る音に振り向いたら、コウちゃんがふわっと微笑んだ。



「初めてだな、涼子と二人で花火観に来るの」



そういえば、二人で観に来るのは初めて。一緒に来たことはあるけどヨシ兄か家族か、必ず誰かが一緒に居た。



今日二人で来たのは私が友達にフラれたのと、ヨシ兄が彼女と行くことになったから。







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