(気まぐれっぽい)Queen
柊 司side

「皆~、おはよっ」

「おはよう。萌花ちゃんは、今日も元気いいねぇ。どう?司じゃなくて、俺にしない?」

「へへっ。そうかな。けど、私梅くんにしません。い…許嫁は司くんが良いです…」

照れながら笑う彼女。元気よく笑う彼女。

あぁ、馬鹿らしい。
俺等に騙されてるっていうのに、何にも知らないでへらへら笑う俺等の姫。
穢れも何も知らない、強い意志がある瞳を俺等に向ける姫。
俺がニコニコ笑っていれば、ころっと騙される馬鹿な姫。

彼女は知っているのだろうか。彼女は、囮になってもらう為に姫になっている訳を。

「つ…司くん。どうしたの?考え事してた?」
俺の名前を言うのでさえ、恥ずかしがる彼女は。俺にはない、純粋な瞳で俺に聞く。

「んーん、大丈夫。だから気にしないで」
俺は汚いから、偽りの笑顔で嘘を吐く。

「うん、分かった。じゃあ気を付けてね」
夫婦かよ と思わせるこの会話。言っている俺まで呆れてしまう。

許嫁なんて嘘。丁度、彼女がヤクザの娘だったから、上手く嘘をついただけ。それにまんまと騙された彼女が悪いだけ。

最初の方で来た、Queenの奴らは知っているのだろうか。

俺等は、薄汚くて、世間のハミダシ者だということを。

そうさ、俺等は狂ってる。…けど、俺等を狂わせたのは世間だ。
< 15 / 91 >

この作品をシェア

pagetop