(気まぐれっぽい)Queen
「…それでも、俺は」そう言いかけたとき、お姉さんが溜め息をついた。

俺のこと…嫌いになっちゃった…?

そんな不安な気持ちを隠して、お姉さんの顔を見る。お姉さんは、呆れたような、異物を見るような目をする訳でもなく。ただ、真剣だった。

「あのなぁ、司。世の中生きていくには手段なんか選ばないんだ。そんなの選んでたら、下手したら…死ぬぞ?」

お姉さんがそういう事を言うのは、1度も見たことなくて。ただ、俺はまだお姉さんのことを全然知れてないんだなぁ、なんて呑気に思ってた。

「なあ、司?私の為だと思って…お願いだ」

そんなお姉さん、俺は嫌いだよ。傲慢で自分勝手で、物事サッパリしてていつも元気…。そんなお姉さんしか、俺は知らない。こんな…


哀しそうな眼をしてる お姉さんなんか知らないんだ。

だから。

「…うん、分かった。お姉さんの為に、俺頑張る」

「あぁ、ありがとな。司」

お姉さんは哀しそうに笑う。寂しい笑顔で笑う。いや、笑ってなかったなぁ。泣いてたなぁ…心が。


俺、頑張るから…だから、笑って?


こうして、俺はカラダを売るようになった。ただ、お姉さんの為に…梓の為に。そう思いながら。
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