(気まぐれっぽい)Queen
12月25日

今日は、お姉さんは家にいた。

最近、出掛けることが多くなったお姉さん。それでも、今日は…特別な日は一緒に居てくれた。

「今日で私と司が出会って、1年だな。こんなにデカくなっちゃって…。お姉さんは悲しいよ」

「そうかな…?俺は、喧嘩も強くなったし、お姉さんを守れるようになったから…嬉しいよ」

面を食らったような顔をしているお姉さん。そしたら急に、俺の頭を力強く押し付けて…。

「照れるなぁ…。…ありがと」

小声で言った。本当に、聞こえるか聞こえないかぐらいの声で。
それが、たまらなく嬉しかった。

俺がお姉さんを支えられているんだと認められたような気がしたんだ。


シンシンと降っていた寒い雪の夜。俺のことを拾ってくれたお姉さん。色んなことを教えてくれたお姉さん。12月25日、それは俺にとっては幸せな日だった…。


「あのなぁ、司」

「ん?どうしたの、お姉さん」
こういう口調のときは、いつも嫌なときばかり。今回だって…


「お姉さん、癌ならしいんだ」


ほら。


「え…?」

「私、余命1ヶ月なんだって。もう、取り返しのつかないところまで、悪化しちゃったらしいんだ」

力無く笑うお姉さん。そんな訳…ない。
だって、お姉さんはいつだって、元気で自己中で…、人一倍素直じゃない。

お姉さんはベランダの方へ行く。自然に俺の方に背が向いた状態になった。

その背中が、いつもより小さく感じたのは…俺がデカくなったからなのだろうか。それとも…お姉さんがやつれたから?

「ごめんな、司」

どうして、謝るの…?俺よりもお姉さんの方が辛いはずなのに、どうして…。

どうして、自分のことより俺のことを優先するの…?


シンシンと降っていた雪の夜。それは、今日も降っていて。俺を拾ってくれたお姉さん。色んなことを教えてくれたお姉さん。そして…、余命宣告をしたお姉さん。

12月25日。今日は俺の誕生日だけど…、俺にとって一番…一番嫌いな日だ。
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