(気まぐれっぽい)Queen
萌花side

無我夢中で走った。いつの間にか、繁華街に来ていたようで、そこら辺にあるベンチに座った。

今でも、司くんの言ったことが…頭から離れなくて。

頭にこびり付いているのだ。司くんの言葉全てが。

[なら、忘れれば良いじゃん。その方が楽だよ]


私の中の黒い感情が、そっと私に囁く。
……やだ。忘れたくない…。けど、忘れたいんだ。

「…ぅ…ふ」

ポロポロ流れ落ちる涙。堪えても堪えても溢れ出てくるのは、私の感情の代わりになのだろうか。


目元を両手で隠して、声を押し殺して泣く。誰にも気づかれないように…、静かに。


「辛い…よぉ」

辛…い。一度口に出してしまえば、とまらなくなって…。

「うぅぅぅ」

必死で我慢する。


「声を押し殺して泣くと、ストレスが溜まっちゃうよ?」

とても綺麗な声が、私の動きをとめた。

高くもなく、低くもない、丁度良い高さの声に、すっと頭に入ってくるような大きさの声。


だれ…?


そう思い、顔を上げた。
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