(気まぐれっぽい)Queen
残念ながら、顔はお面で隠れていた。狐のお面。不審がられても良いはずなのに、なぜか普通に私の前に立っている。


「あなたは…?」

掠れてしまった声で問うてみる。


「あぁ…、私かい?私は名乗れるほどの者じゃないからね、名乗らないことにしとくよ」

「ぇ…ぁはい」

なんか、すんなり受け入れちゃった。この狐さんは、男か女かも区別できない。声の高さからも、身長からも、口調からもできない。

「やあ、君はどうして泣いてるの?」

いつの間にか、狐さんは私の隣に腰を下ろしていた。

「私…、ある人を傷つけちゃって…。それで、その人が初めて怒って…」

「そっか」

…人に私の中にある気持ちを言うことで、心が少し軽くなった気がした。


「でもさ、怒るってことは感情をぶつけるってことだよね。だから、その人は君と真正面からぶつかってるんじゃないかな」


そう…なのかな?

「それにさ、君はまだ高校生だ。悩んで悩んで、悩みまくって。…楽しんじゃえばいいんだよ。全部、楽しんだ者勝ちだよ」


「そっ…か」

悩みまくって…ぶつかって…そうすればいいのか。


「ありがとうございます!狐さん」

「うん。…またね」

そう言って、狐さんが手を振ってくれた後の記憶があまり無いのだ。
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