(気まぐれっぽい)Queen
そう言うと、ミサちゃんはスッと立ち上がり、私の後ろに来た。

「え。ミサちゃん、紐は?」

「あぁ、あたしには紐で縛らなかったわ。あの人達、案外馬鹿ならしくてあたしを縛るの忘れてたみたい」

後ろで作業をしながら、ミサちゃんは答えてくれる。

「…解くのは大変ね。こうなったら、三角定規で切るわ」

「なんで三角定規持ってるの?!」

確か、学校の授業で三角定規は必要無かったはず…。

「フフッ 企業秘密よ。…というか、この紐太いわね」

時々、ミサちゃんと居て思うことがある。ミサちゃんは昔(と言っても、中2で知り合った)から、何でもササッとこなしていた。その全てが私や皆には、魔法に見えて、中学校では『魔女』と陰で言われていた。…私もそう思う。


「そういえば、どういう経路で捕まったの?」

「んーとね、なんか、ベンチに座って狐の人と喋ったの。そのあとにガンって、何かでやられて今こんな状態になったの」

ピタリと、ミサちゃんの動きがとまる。

「狐の人…?」

「うん。なんか、狐のお面を付けてて顔は見れなかったし、性別も分からなかったの」

「性別も…?」

「口調も身長も声も、全部女性にも男性にも当てはまるの」

「…オカマとか?」

「ッ〜!ミサちゃん!今真剣に話してたのに…。冗談はやめてよ」

「アハハっ ごめん、ごめん。つい…」

口ではこう言ったけど、本当は、さっきまで怖くて不安だった気持ちを溶かしてくれて、今は少し心が軽くなった気がする。

「それにしても…、性別不明ねぇ」

考えるように、呟くミサちゃん。力になりたいけど、私には判断つかなかったし…。


「でよー。あーなったんだよなぁ」

騒がしい声が微かに聞こえてくる。

「ミサちゃ「しっ」

ミサちゃんは口元で静かにと云うジェスチャーをしてきた。

「いい?よく聞いてね。もう縄を解いたから、萌花は____…してね。分かった?」


「うん。分かった。ミサちゃんも怪我しないでね」

すると、ミサちゃんは妖しく綺麗に微笑んで…。

「当たり前でしょう。なんせ、中学の時に『魔女』と呼ばれていたんだからね」

な、なんでそれを…。

「じゃあ、お互い頑張ろうね」


やっぱり、ミサちゃんは『魔女』だ。









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