(気まぐれっぽい)Queen
段々近付いてくる話し声。さっきの人達なのだろう。
近付いてくるにつれて、私の心臓もドクドクと活発に動き始める。
久しぶりだなぁ、演技をするの。
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「あのね!私、大人になったら大女優になりたいの!!」
「ハア?萌花ちゃんが大女優なんて…無理だよぅ」
周りに何回も何回も諦めろと言われてきた私の将来の夢。
「できるもん!私にだって…!」
「そんなこと言ったって、萌花ちゃんはヤクザの娘じゃん」
「ッ…」
「行こお、皆。じゃあねぇ、萌花ちゃん」
小学生の頃、友達はろくすっぽいないし、周囲からはどこか1本線を引かれてて、私の夢を応援してくれる人もお父さんと葵くんだけだった。
お父さんは元々気さくな人で、いつもニヒヒと笑っていた。
私の夢も、『おう、頑張れ』と応援してくれて、そんなお父さんを尊敬している人は沢山いた。…私も葵くんもその1人だ。
特に葵くんは、すっごく尊敬していて、将来は私のお父さんみたいな、カッコイイ人になること。らしい。
「なあ、萌花」
「なあに?お父さん」
「夢を叶えるためには、一生懸命努力しないといけないぞ」
「うん。分かったよ、お父さん」
「夢を叶えるためには、たとえ辛いことが起こっても、諦めずに乗り越えていかないといけないぞ」
「うん。分かったよ、お父さん」
「夢を叶えるためには、夢を追いかける自分を誇らしく思わないといけないぞ」
「うん。分かってるよ、お父さん」
「よし、それでこそ俺の娘だ」
このやりとりは、お父さんと私の合言葉みたいなものだった。