(気まぐれっぽい)Queen
不意に、チョンと右腰辺りの服を摘まれる。振り向いて見てみれば。
「どうしたの、時空」
今にも泣きそうな顔をして、目を潤ませる時空がいた。
「ミサちゃん……だい、じょうぶ……?」
ああ、そんなことか。そう思い、口角を上げ、ニヤリと笑い、
「別に…大丈夫よ。これぐらい、なんてことないわ」
そう言った。
「ミサちゃん……」
それでもまだ、不安そうに呟く時空。仕方がない。やむを得ず、あたしの最終手段をする。
「“別に”平気よ。それに、あたしのこと……時空達が守ってくれるんでしょ?」
“別に”
時空たちがこの言葉に弱いことを知っていながらそれを言う、あたしは卑怯だ。
「ミサちゃん……。お願い……だから、無理……しないで」
辛そうに、哀しそうに笑う時空。ああ、そんな顔しないで。あたしは平気だから。
そんな思いを込めて、今もなお服を摘んでる時空をギューッと抱きしめる。
「あたしは、平気よ」
意味もなく、この言葉を口にする。誰にも気付かれないように、そっと。自分に言い聞かせるように…ぽつりと。
空を見上げてみれば、もう夜の空に変わっていて。暗闇の中でキラリと光る星がとても。……あたしには眩しかった。