(気まぐれっぽい)Queen
「ミサちゃん…ちょっと良い?」
萌花が深刻な顔でやってきた。
「どうしたの?そんな顔して」
そう言うと、萌花は俯いたまま黙り込んだ。本当にどうしたの?と、もう一度聞こうとした時…。
「ミサちゃん、勉強教えてください!!」
「…………は?」
意味が分からなくて、動きが止まってしまう。なんせ、さっきまでの深刻そうな顔は、勉強が原因だったのだから。
「お願いだよ〜、あと1週間しかないんだよ」
「……ちなみに、教科は?」
指を折りながら数える萌花。いや、ちょっと待って。なんか4個以上あるんですけど…!
「ぜ、全部だった…。あはは」
乾いた笑いをする萌花だが、大変なのはあたしの方だ。…いや、あたしじゃないか。
「萌花。あたしにはそんなに教えられないわ。しかも、自分の勉強で精一杯だし…」
「え、」
「桜も無理ならしいわ」
「ええ、」
ムンクの叫びみたいな顔になった萌花。プッ、笑える。
「どうしよ…」
「大丈夫よ、萌花。葵が教えてくれるって言ってたわよ」
パアァァと、お花が咲くような表情を見せる萌花。ほんと、小動物みたい。
「ありがとう、ミサちゃぁぁん!!」
ギューッと力強くあたしの腰に抱きついてくる萌花。よしよしと頭を撫でてあげる。
「ほら、萌花。お礼を伝える相手が違うでしょう。いってきなさいよ」
「うん!」
さっきまでの表情はどこに行ったんだ?と思うぐらい、明るい顔で葵の元へ行った萌花。
「やれやれ」
長い溜息を吐く。全く…、2人とも素直になればいいのに。
元々、成績の悪かった葵。それでも今 成績が良いのは、一生懸命必死に頑張ったから。それも萌花のためにね。
萌花はどうしようもないおバカさんだから。支えてあげたいんだろう、教えて助けてあげたいんだろう……自分の好きな子を。
萌花も気付いているはずだ。葵が自分に好意を寄せてることだって。