(気まぐれっぽい)Queen


そう言ったときの、自分の表情はどうだったのだろう。

笑ってた?怒ってた?それとも…哀しそうだった?


「さ、さて!じゃあ、次の問題出してくれよ」

内谷くんは、沈黙に戸惑ったのか、声を高くして、明るくあたしに言う。

戸惑ってることぐらい、バレバレだっつーの。

…まあ、これが彼なりの優しさなのだろう。だからあたしは…

「じゃあ、次の問題ね」

その優しさに甘えさせてもらう。




「次の問題は…、そうねぇ、けいさつを漢字で書いてちょうだい」

「けいさつだな!おっし、簡単だぞ」

「あら、そうかしら?」

「おう!簡単だぞ。だって、俺の父親、けいさつだし」

へへん と、ドヤ顔で言う内谷くん。

「じゃあ、あたしのお母さんと同じね」

そう。あたしの母は、警察官だった。
人一倍、正義感が強いくせに涙脆い。本当は怖いくせに強がって。いつも父を心配させていた。

「そうなのかッ!?スゲェな」

内谷くんは目をキラキラと輝かせながら、顔をずずいと近付けてきた。いや、なんなんだ。

すると…

「……僕だって………書けるし…」

時空が頬を膨らませながら呟いた。

「え…」

「よし!じゃあ、俺と対決だな。よーいドン」

内谷くんがそう言うと、時空はペンを取り黙々と書き出した。あれ、おかしいな…。


時空、漢字書くの苦手なのに…。


「はい、出来た!」

「ぇ…と、貸して。見てあげる」

戸惑いつつも、2人の書いたものを見てみる。

まずは、時空のだ。

綺麗な字で書かれている。しかし、これはおかしいだろう。そこに書いてあった漢字…、それは…。


“警殺”


手が震えてしまう。あたしの異変に、気付いた内谷くんは、そろりと時空の答案をみる。

そして、笑った。

「お前っ、惜しいな!あと一文字で合ってたのに…!ヒーっ、ウケる!!」

内谷くんが腹を抱えて笑い出した。それに興味をそそわれた山崎くんも時空の答案を見た。


すると、山崎くんも内谷くん同様、腹を抱えて笑い出した。

「はっ!?警殺ぅ!!??バーカ、けいさつが人殺してどうすんだよっ!!ギャハハは」

時空…。

時にはそんな間違いもあるよ。


次に内谷くんの解答を見てみる。


“剣殺”


うっわ……、これは酷い。警察は剣で殺さないし。


「皐月も酷ぇよ。なんだ、剣殺って。時空のより可笑しいから」


またもや、山崎くんは腹を抱えて笑い出した。

チラリと時空と内谷くんの顔を見る。2人とも、タコのように顔が真っ赤だった。


「しょうがないわね…、教えてあげるわよ」

こうして、2人の勉強を教えることになった。



美咲side _END_

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