(気まぐれっぽい)Queen
??side
「もしもし?私だけど…」
万が一のため、小声で話す。
『どうしたの?』
声に優しさがある。良かった、変わってないみたいだ。
「あのね、パスワードなんだけど…」
パスワードを順に言っていく。
聞かれてないよね?大丈夫だよね?
不安のせいか、段々と早口になってしまう。
『…よし。ありがとう、助かったよ』
電話越しでも、そう言われると心がホカホカしてくる。笑っている顔、見たいなぁ。最近見てないもん。
「会いたいよ…」
つい、口に出してしまった。気づいたときにはもう遅い。
『…え?なんて?』
嘘。とぼけているけど、私の言葉、ちゃんと聞こえてたハズ。なのに、分からないふりをする。
「…ううん、何でもない」
『そっか』
やっぱり私達はもう……。
「…またね」
もうちょっと声だけでも聞いていたかったけど、あまり時間がない。
『うん。バイバイ。怪我すんなよ?』
“怪我すんなよ?”
こんな些細な一言でも、胸にじんわりきて…。
「大丈夫。…じゃあね、葉月(ハズキ)」
『うん。じゃあ、切るね』
ツー、ツー、ツー、と虚しく音が鳴る。まるで今のは夢だったかのように、現実に引き戻された。