(気まぐれっぽい)Queen
玄関で靴を揃えていると、パタパタと葵くんのお母さんがやって来た。
「萌花ちゃん、久しぶりね〜。元気だったかしら?」
にこにこ微笑んでいる葵くんのお母さん。歳はもう四十代のはずなのに、全然そんな感じはしない。三十代みたいだ。
目もクリクリで、童顔な葵くんのお母さん。雰囲気もあって、周りの男の人はメロメロだ。
「あ…、葵くんのお母さん。お久しぶりです」
「あらやだ、そんな畏まらないでよ〜。ほら、葵くんのお母さんなんて言わないで、向日葵(ヒマワリ)って呼んでよ。ねっ?」
「ひ、向日葵…さん」
葵く……向日葵さんの迫力に押され、名前で呼ぶ。向日葵さんは満足したのか、「よし」と言って、微笑んだ。
「とめちゃってごめんね。これからも葵と仲良くしてちょうだいね?」
「はい!勿論です」
「そう?それじゃあ、またね」
友達感覚でお喋りした後、向日葵さんはそそくさとどこかへ行ってしまった。
「萌花」
葵くんの声が聞こえ、その方向へ向く。
そこには、両手を組み、どこか不満そうにムスッとしている葵くんが立っていた。
「遅い」
「あ…、ごめんね」
葵くんはクルリと方向回転をし、歩き出す。私も慌てて、その後をついていく。
たまに後ろを向いて、ちゃんと私がついてきているか確認する葵くん。
その姿に、クスリと笑が溢れる。
「なっ、なんだよ」
「いいや。何でもないよ?」
葵くん、ピュアだなぁ。