(気まぐれっぽい)Queen
葵side


「…お、おいしい」


萌花は、意外そうにポツリと呟いた。
そんな萌花の反応に嬉しくなり、ついつい得意げになってしまう。


「だろ?」


「…っ…」


あ、怒っちまったか…?急に俯いてしまった萌花。そりゃそうだよな…、萌花だって女だし。男の方が女子力高ぇとか女としての立場がなくなるもんな…。


「わ、悪かっ「くーやーしーいー!」


バンバンバンと思いっきり机を叩く萌花。少しだけ、きゅんときてしまったのは内緒だ。


「ねえっ!いつの間に作っておいたの、こんな豪華なご飯!ねえっ、ねえねえね「わ、分かったよ!言うから、言うからちょっと落ち着けって…」


顔をずずいって近づけてきた萌花。理性が…、そう思った俺は萌花を落ち着かせた。…危ねぇ、あと少しでキスしちまうところだった。


「で?いつ作ったの、こんな豪華なご飯」


口を尖らせながら聞いてくる萌花。あ、これ拗ねてるのか。こういう表情の萌花はレアだ。いつも笑ってばかりだし。


俺にしか見せない、特別な表情。
つい、頬が緩んでしまう。


「ちょっ、葵くん!?ニヤけてないでおしえてよ」


「あ、あぁ。…作っておいたんだよ、こういう時のために」


「………え?」


「だァかァらァ、分かってんだよ、こうなるパターンは!萌花が遅刻してくることも、お腹空かして鳴っちゃうことも」


こいつは一体、何年一緒にいたと思ってんだか。萌花の行動パターンとかは、なんとなく分かってしまう。いつも見てたし。


「え…、じゃあ、全部私のために…?」


認めたくないけど、まあ、そうなる。自分でも顔が真っ赤なことが分かる。めっちゃ恥ずかしい。


「………」


黙り込んでしまった萌花。んだよ、幻滅しちまったとか…?不安になって、萌花の方をチラリと盗み見する。


……は?






< 75 / 91 >

この作品をシェア

pagetop