(気まぐれっぽい)Queen
そこには、なぜかかばんをあさっている萌花の姿があった。
「いや、何してんだよ!」
突然の萌花の行動に声を張り上げてしまう。それでも萌花はかばんをあさっている。
「いや…、ちょっとね…」
未だにガサゴソと何かを探している様子の萌花。どうすればいいのか分からなくなった俺は、とりあえず萌花の横で立っていた。
やっと見つけたのか、パアァァと笑顔になる萌花。すると、素早く立ち上がった。
そして、さっきまで探していたものを俺に寄越してきた。
「はい!」
見ればそれはクッキーで、ピンク色で可愛らしくラッピングされていた。
「え…「作ってきたの!!…昨日なんだけどね」
萌花が…俺に?
固まる俺を他所に、一生懸命説明している萌花。その姿は、とても愛くるしい。
「葵くんより、おいしく作れなかったけど、ごめんね?」
「……」
「でっ、でもね?あんまりこういうの作ったことがない私にしては、良い方だと思うよ!」
「……」
「あ、でも…、ちょっと失敗しちゃってる所もあるかも」
「……」
俺にクッキーを差し出すその両手は、確かに所々に絆創膏が貼られている。
ああ、一生懸命作ったんだな…、そう思うと好きという気持ちが込み上げてきて。